オリジナル・トランプ 第1話 「橋渡し」


JOKER(由人)

KINGハート(業)

QUEENダイヤ(田澤)

JACKスペード(栞)

ACEクラブ(ミカミ)

時間は揺り籠、思うままに生きなさい。

第1話 橋渡し

2016年4月

業「誕生日来てないメンバーはまだ15歳だからな、なかなか採用してもらえないと思うぜえ?」

由人「どっちにしろ高1取りたがる店なんてそうないよ」

栞「活動資金がなくてもやれることやろうっ」

田澤「栞がそんなこと言うなんて不思議~」

ミカミ「由人の言ったこと翻訳したんだよ」

栞「あたし、みんなの本音が言える!」

田澤「筒抜けってことお?じゃあ隠し事する必要がないから楽でいいわね」

業「隠せないのか...俺、この5人なら何でもできる気がするんだ」

由人「マネージャーもほしいってかあ?」

業「そうは言ってねえよ!」

栞「いいかもしれない!」

田澤「ねえ、マネージャーのオーディションしましょうよ」

ミカミ「SNSで告知して」

栞「来た人の中からこの人!って人を選ぶ!」

業「俺は練習のスケジュールも一人一人の責任で決めたいなあ」

由人「ばか、誰もまだバイト決まってないだろ」

栞「業天才!オレ達には最優先事項がある!」

ミカミ「最優先事項?ライブ?」

田澤「そうね、目的と手段は混同しがちよね」

業「客観的に見れる人が必要ってか」

由人「マネージャー要らないだろ」

栞「要るってこと!」

ミカミ「由人は素なのかジョーカーなのかわかんないなあ」

田澤「頭の体操よね、おもしろいわ?」

業「じゃあ全員で告知しよう、たぶん100人くらいその告知見るだろ」

ミカミ「来るのは何人かなあ」

田澤「どんな人が来るかしら」

栞「アーティスティックな人がいい!」

業「それは栞の本音だな?」

由人「違うよ」

ミカミ「違うの?」

田澤「アーティスティックな人がいいっていうのは」

由人「満場一致だ」

業「そうなのか!」

ミカミ「おれもそう思う!」

田澤「あたしも」

栞「あたしも!」

由人「俺はちょっとは人間臭い奴がいいなあ」

田澤「アーティスティックな人って自分はアーティストじゃないってこと?」

業「いや人間はすべからく表現者だよ」

栞「すべからくってそうあるべきって意味だよ?」

由人「まあ矛盾しないか」

栞「由人の今のそれ、いやだなあ」

田澤「栞っ、今のどういう意味なの?」

栞「由人、自分が一番すごい表現者だと思ってる」

業「かあっ!おこがましいなあ!」

栞「でも今は作曲できるの由人だけ」

田澤「詩なら全員書こうと思えば書けるわよね」

業「しばらくは既存の曲やるからさ、由人に依存することにもならないって」

由人「やっぱりオレ、ジョーカーじゃなくてキングだろ」

業「じゃあ俺が道化師だってかあ!?」

一同「ははは」

☆★☆

オーディション当日

栞「全員で面接官になる」

田澤「いいわね。バイトの面接のとききっと役立つわ?反対の立場の視点って」

業に着信

ミカミ「告知見たって人が来たよ!これから一緒にそっちに行く!」

☆★☆

志望者、着席。

大学生「失礼します」

業「何才ですか?」

大学生「20歳(はたち)です」

由人「将来の夢ってありますか?」

大学生「プロデューサーです」

田澤「あたしたちはマネージャーを募集してたんですけどマネージャーとプロデューサーの違いって何だと思いますか?」

大学生「そうですね、プロデューサーは世界観を演出する人、マネージャーはそのままマネジメント、つまり業務管理する役割だと思います」

業「業務管理か」

栞「あたしたち、客観的な目を求めてマネージャーを募集したんです」

大学生「はい、僕は夢のためにマネジメントも知っておかないとと思って応募しました」

ミカミ「チームプレイの経験はありますか?スポーツとか」

大学生「吹奏楽部に入ってました、指揮者にあこがれたこともあります」

由人「オレ達は自分で世界観を演出するつもりだから退屈な雑務ばかりあなたに押し付けるかもしれない」

大学生「かまいません、ひいてはグループがどう動きたがるかをいくつも見ておきたいってことですから」

栞「長期的に見たときいつまでマネージャーやってくれますか?」

大学生「長期的...来年までですね、就活が始まるので」

業「なるほど...」

由人「もっといろいろ聞きたいけど」

栞「ここで終了とします」

大学生「ありがとうございました、採用でも不採用でも連絡していただけますか?」

業「そうします」

大学生「ありがとうございます、では失礼します」

ミカミ「見送らせてください」

業「そのまま、店の前にいてくれるか」

ミカミ「オッケー!」

☆★☆

田澤「ねえねえ!今の人いきなりいい感じじゃなかった?」

業「あ!」

由人「名前聞いてないな」

栞「すごく失礼だった」

田澤「ああスタート切ったのは業だけど」

栞「流れ始めたら戻すのためらう」

業「ミカミに電話する!」

由人「名前聞いといてってか?」

田澤「それも失礼よね」

栞「失敗経験、1」

業「おいミカミ!その人の名前!え!?名刺くれた!?よかった!!」

由人「準備がいいな」

田澤「大学生って持ってるものなのかしら」

栞「多分、いままでも活動してたんだと思う」

由人「学歴にも興味持たなかったなオレら」

田澤「知的なムードに飲まれたわね」

栞「聞かなくて正解」

由人「なんでだ?」

栞「あの人、学歴にコンプレックスある」

田澤「どこでそう思ったの?」

栞「雰囲気」

業「俺ら年下だし、日本的でいいじゃん」

由人「それ嫌だな」

業「なんでだ?」

栞「由人は和の心に縛られたくない」

業「そっか、由人はずばずばいけばいいよ」

由人「いや、好きにやるよ」

田澤「ほんと、由人って不思議ねえ」

着信

業「おう!二人目来たか!?」

ミカミ「来たけど知り合いだよ、どうする?」

業「知り合い!?おもしろい!通してくれ!」

ミカミ「わかった」

☆★☆

ミカミ「なんで名前出しちゃダメだったの?」

???「業くん通してくれないと思って」

☆★☆

ミカミ「連れてきたよ」

松雪の顔が見える。

業、絶句。

由人「松雪」

栞「二中の人?」

業「なにしにきやがった!?」

松雪「マネージャーに志願しようと思って」

業「冗談じゃねえ!お前なんか願い下げだ!」

松雪「そう言うとは思ってたよ帰ったほうがいいかな」

栞「ダメ。きてくれたんだから」

田澤「あたしたち二中でのことは知らないもの」

業「く~!」

由人「面接する、いいか松雪?」

松雪「お願いしたい」

田澤「じゃあ」

栞「始めよう」

松雪、着席。

田澤「お名前を教えてください」

松雪「松雪一葉(かずは)です。一に葉と書きます」

業「どうして来たんだ?」

松雪「大人になりたいと思って」

業「俺らのやってることが子供じみてるって言いてえのか?」

由人「そうは言ってないだろ」

栞「業とのしがらみは聞かない。あたしたちにもわかる言葉でなぜ志願したかを教えて」

松雪「業くんと笹原を手伝いたいと思った。クラスメイトだったし」

田澤「要するに業に鎌かけられてたってわけね」

業「おいアスカ!その言い方はねえだろ!!」

田澤「あたしたち業と肉体関係はないの」

業「やめろ!」

由人「松雪、俺らはお前に雑務を押し付けるかもしれない」

松雪「たとえば?」

ミカミ「スケジュール決めとか会場予約とか」

松雪「18になったら車だって出すよ」

業「くっ」

由人「結構長い目で考えてくれてるんだな」

松雪「基本的に雑務をこなす気でいる、プロデューサーとマネージャーは違う」

田澤「純粋な業務管理に専念して世界観とかそういうのには口を出さないって言ってるけどそれでいいのかしら」

松雪「客観的に、あるいはファンから見てふざけた行動をとりそうになった時は口出すつもり」

業「ファンだあ?」

由人「最後の質問」

栞「今、業をどう思ってる?」

由人「それ」

業「なんかあんのかよ」

松雪「僕は...業くんを見捨てた」

業「そんなセリフは自己陶酔したい奴が吐くんだよ!俺にはこの4人がいるんだ!」

ミカミ「若ちゃん」

業「なんだ?」

ミカミ「人が変わってるよ」

業「黙ってろってか??」

栞「最後の質問の答えは聞けた」

由人「オレは別に松雪のことどうとも思ってないぞ」

田澤「たぶんもう誰も来ないわ?だからさっきの人とどっちにするか決めたら連絡するわ?番号は」

由人「オレが知ってる」

栞「メモリー確認して」

由人「わかった...あった、ほら。番号同じか?」

松雪「うん」

業「松雪、帰ってくれ」

松雪「ふふわかった」

業「(くそっなにがおかしいんだ)」

ミカミ「見送るね」

☆★☆

松雪「やっぱり怒らせちゃったか」

ミカミ「細かいことは気にするなって、若ちゃん小学生の頃から時々人が変わるんだ」

松雪「そうなんだ...じゃあ、ここで」

ミカミ「来てくれてありがとう...、あの」

松雪「え?」

ミカミ「一回笑ったよね?どこがおもしろかったの?」

松雪「ああ、いままで業くんの家行ったことなかったからさ」

ミカミ「おれもないや」

松雪「ううん、君を含めた4人が業くんの家、ホームなんだなって」

☆★☆

ミカミが戻ってくる

業「二択なんだ」

由人「片方は絶対嫌ってか」

栞「でも業がこれじゃあ松雪くんは無理そう」

田澤「藤代さん(大学生)に決めたらどうなるかしら」

栞「主導権は私たちのもの」

ミカミ「松雪を迎えるってのは無しなの?若ちゃん」

由人「おっ」

業「あいつを迎えて成り立つもんじゃねえオリジナル・トランプは」

田澤「ならマネージャーは藤代さんでいいのね?」

業「文句ねえよ」

☆★☆

後日、夏祭りのライブの曲目を決める6人

藤代「ノスタルジィから始まるってのはどうだろう?」

業「悪くない」

由人「オリジナル曲はまだ完成度が低い」

栞「由人の曲は未来志向でもノスタルジィでもない」

田澤「そうよね独特よね」

ミカミ「ノスタルジィってなに?」

業「懐かしさ、かな」

ミカミ「へえ、じゃあ、青い空に絵を描こう」

由人「いいなそれ」

栞「あの歌で到着した後の世界を由人は描(えが)いてる感じがする」

業「じゃあ赤いやねの家」

田澤「ふふ、業が転校してきた日に歌った曲ね」

藤代「出番で歌えるのは4曲くらいだと思うよ」

ミカミ「オリジナルも入れよう」

業「なら由人のあの曲がいい」

由人「『エニグマ』か」

業「あと一曲は」

由人「新曲なんてそうすぐできるもんじゃない」

栞「任せとけって言ってる!!いい曲があるって!」

業「へえっ、夏祭りのライブ楽しみだなあ!!」

☆★☆

7月

業「トップバッター!5人組のオリジナル・トランプです!今日が初ライブです!聞き覚えのある曲があったら思うままに聞いてください!」

青い空に絵を描こう

赤いやねの家

アジアの純真

エニグマ

業「(Aメロ)

赤い屋根 青い下駄

水色の雨 桜色の夢を持ち

僕は眠ってた

(サビ)

ずっと見ていたよ

君が僕との約束を果たそうとする姿を

(Bメロ)

赤い雨を恐れ

裸足の日もあったねでも

ずっと信じていたよ

僕が花咲く日を

(Cメロ)

君が過ぎ去った日 僕らは夢を叶え

僕はまた同じ約束を次の誰かとかわす

今日から(僕以外の一人称)が僕だ

(Aメロ)

赤いシャツ 水色のプリントの模様

背中に大きく灯り

理想の青を抱いて

(Bメロ)

散った桜色は

観えない空を舞う

それは今青の君が夢見る

あの日の約束

(サビ)

僕がここにいる

そのこと自体が

名を咲かせた誰かが僕を愛して

くれた日の証(あかし)

由人のギターソロ

由人「めぐるめぐるよぼくらは

時の旅をする

未来はあの日の足跡

たどれば君がいる」

業「この地層の模様は

めぐりながら連なる

すべての色と出会う約束

博愛をなそう

このエニグマの層で」

(ロックなアウトロ)

歓声

☆★☆

カットイン

☆★☆

10月

最初の夏祭りライブは盛り上がり、うまくいったがその後はいまいち。

お金の一部を藤代さんに頼ってライブをしたのがまずかった。

発言権を持たれ、5人の思うような世界観と藤代さんのそれとの間にはギャップが生じていた。

いつものファミレス、5人の表情。

由人「もうバンド辞めようぜ」

業「...それはジョーカーとして言ってんだよな?」

由人「ああ冗談さ」

栞「その冗談、賛成」

業「え」

ミカミ「いったん解散して改名しよう」

田澤「まわりくどいわねあのマネージャーに気を遣うことないわよ」

由人「そうだな向こうも忙しい大学生だ」

栞「そう、あの人暇つぶしでやってるのが嫌」

業「松雪を選ぶわけにはいかなかったろ?」

由人「なんでなんだ????」

業「う」

由人「松雪には普通でいて欲しかったんだろ。これは冗談だけど俺たちも真面目に高校生の本分果たそうぜ」

ミカミ「バンドがなくなったらバイトだけだ」

田澤「勉学よ」

由人「みんなの親もオレらのこと応援してくれてるよな」

栞「そう、表向きは」

業「俺たちは普通の大人になっちゃダメなんだよ!!!」

間。

栞「でも、常本先生だって普通の大人」

業「!」

田澤「そうよね、あんな生き方ができるなら別にバンドにこだわることもないわ」

ミカミ「だなあ」

業「ミカミ...!」

ミカミ「若ちゃん、やっぱりバンド辞めよう」

業「4人で満場一致か」

由人「お前をのけ者にしない」

栞「オリジナル・トランプってバンド名は5人のもの」

業「......わかったよ、解散だ」

由人「オリジナル・トランプってバンド名の発案者は業だからな」

栞「えっと、使うなってこと、5人のものだから」

業「お前らじゃなきゃバンドなんてやんねえよ」

ミカミ「若ちゃん...」

田澤「業...」

うつむいてる業。

間。

業「常本先生も普通の大人、か...(青白い常本先生と泣きながら抱きしめ合った映像)(じっちゃんの後ろ姿)

ああそっか、常本先生とじっちゃんって似てたんだ

...はは、そんなことに気づくためにバンド始めたのかよ」

業目が覚める

携帯に2016年4月の表示

悪夢を見ていた気がするが何も覚えていない

☆★☆

業「今日すっげー夢見た気がするんだよ...楽しかったけど、後半でどんどんバッドエンドにむかっていった気がする」

由人「なんだあ?幸先悪いなあっ」

☆★☆

田澤「あ、業と由人来たわよ」

ミカミ「おれ外で来る人いるか待ってる」

☆★☆

田澤「業顔色悪いわね」

由人「夢見が悪かったんだって」

栞「どんな夢?」

業「んーライブをした気がする」

由人「だけどバッドエンドだったんだって」

田澤「あら残念」

栞「バッドエンドの世界はその世界のそこで終わり」

業「あの世界の俺が永遠にいるわけじゃないのか...ちょっと救われたよ」

☆★☆

業に着信

ミカミ「二中の知り合いだけどどうする?」

業「え?知り合い?...まあ通してくれ」

☆★☆

ミカミ「どうして名前出しちゃダメだったの?」

松雪「業くん通してくれないと思って」

☆★☆

田澤「やっと一人目ね」

業「...なんで来たんだ?」

松雪「業くんと笹原を手伝いたいと思った」

田澤「業の顔を見るにしがらみがあるようだけどそれは吹っ切れてるの?」

松雪「中二の頃のことだしさすがにね」

栞「純粋な気持ち」

松雪「うん、ただ混ざりたいってのとも違う」

業「お前以外居ねえんだから仕方ねえ」

栞「?」

田澤「松雪くんにマネージャーをお願いしたいわよね」

ミカミ「いいんじゃないか?」

由人「俺松雪はどうかと思うぜ」

栞「はは、由人、この6人にビビってる!」

業「まあそんなわけで松雪、スケジュール決めとかいろいろ頼む」

松雪「ありがとう、それでなんだけど」

☆★☆

業「今日のところは...解散だな」

田澤「小目標も決まったし頑張りましょ」

栞「松雪、プロデビューした後のことまで考えてる!」

由人「あれはつまりそういうことかあ」

ミカミ「お金の配分が均等になるようにってことでしょ?」

業「うん。松雪のこと、見直したぜ...」

☆★☆

松雪「全員が作詞作曲の能力を持ってるべきだと思うんだ」

第1話 橋渡し おわり

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